黒い絵

デッサン、ってある。デッサンの特訓をしたことがある人と、我流の人とでは、全く絵の色というか、白さ、というか、黒さ、が違う。その昔、実技試験として、絵を習わずして絵の試験を受けたことがある。まあ、世間知らずというしかないのだけれど、鉛筆と消しゴムで、目の前に置かれた彫刻を、みんなで描く。白い像に見えたので、白っぽい感じの絵になってしまったのだが、周りの達人たちの描いた絵を見て、愕然とした。みんな、真っ黒な絵なのだ。デッサン、って、そんなもんなの?と、少年は、知った。白く見えるものを描くにも、影を描き表現するようだ。光って、影があるから光に見える、逆を言えば、光があるから、影が際立つ。人生でもそうなのかも。暗い気持ちを知るからこそ、明るい喜びや嬉しい気持ちが際立ってみたり、逆に、喜びを知ると、哀しさが、アクセントとして、そこにある。それが混在するから、メリハリのある絵のような日々となったり。ドラマとは、絵画のようなもの、とも言えるのかもしれない。デッサンの仕方、それは、知ると知らないでは大違い。知らなければ生きていけないことはない。知れば幸せか、と聞かれても、そうだ、とは断言出来ないし。白黒でしかないデッサンが鮮やかに色のある絵に見えてくるためには、果たして、何が?

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